おれはうつむいて、パジャマのボタンに手をかけた。……情けない。手が震えている。──昔から、ここぞというときには緊張で震えがきちゃうんだよな、おれって。でも、ここで掌(てのひら)に“人”を書いて飲み込んだりしたら、大まぬけだしなー。ぶんぶん首を振って、忌まわしい記憶を追い出していると、心配そうな声が降ってきた。「……本当にいいのか?」「うん。いいよ」……おれはまぶたを開いた。