天井の蛍光灯に目をやりながら、俺はなかば無意識のまま、自分の唇に触れていた。奴の唇がかすめていった感触が、まだうっすらと残っているような気がして……。──グワン、と軽い振動を起こして停まったエレベーターから、俺は慌てて飛びだす。ヘンだよな、俺。なんで顔が赤らむんだ?と、そのとき。俺の視界に、これ見よがしなベルサーチの柄が。あれは、もしや……。「──磯崎(いそざき)先輩!?」