北崎は苦悩していた。イラストの仕事を始めてから六年。子供の頃から好きで描いていた絵だったが、いまは日々の生活のために、クライアントの要求に応えている。血のにじむような努力の後に完成したイラストでも、勝手に配色を変えられる。カバーを描いた本がどれだけ売れても、金銭的には還元されない。ある日、不思議な女性の夢を見てから目が覚めると――視界から「C」、すなわち「シアン」、青と緑を含んだ色が消えていた。
イラストレーターの北崎は苦悩していた。フリーでイラストの仕事を始めてから、早六年となる。子供の頃から好きで描いていた絵だったが、いまは日々の生活のために、クライアントの要求に応えることを優先している。血のにじむような努力の後に完成させたイラストでも、勝手に配色を変えらることがある。自分がカバーを描いた本がどれだけ売れても、金銭的にはまったく還元されない。イラストレーターという職業の実態は世の中に理解されておらず、「夢の印税生活か、うらやましい」などと言われる始末だ。
ある日、仕事を終えてBARで呑んでいると、不思議な女性と出会った。その日以来たびたび夢にその女性が現れ、また同じBARで女性と出会った日、帰宅して夢を見てから目が覚めると――視界から「C」、すなわち「シアン」、青と緑を含んだ色が消えていた。
+ もっとみる