歴史に翻弄される沖縄で、たくましく生き抜いてきた89歳の絹子は、老人介護施設で暮らしているが、管理されることを嫌い、何度も脱走を企てては失敗していた。そんなとき、紙オムツに頼らなくてはならない状況に陥り、孤高の貴婦人は屈辱感にまみれる。そんな彼女に、なんとも不思議であったかい奇跡が起こる。
那覇市にある老人介護施設「ガジュマル」で暮らす絹子(89歳)は、今日も脱走を企てていた。知り合いもほとんど死に絶え、年寄りが集められて管理される生活にうんざりしていた。ボケが始まって一人暮らしがままならないのは自覚しているが、もうどうにも我慢ならない。だが、何度挑戦しても、介護士の赤嶺に阻止されてしまう。
そんなある日、夜半にベッドでお漏らしをしてしまった絹子はショックを受け、意気消沈。それをさりげなく励ますカメとハルから、積極的に紙おむつを受け入れ、明るく生きていこうというオムツ党の存在を知らされ、党員となった。
そして、戦前、戦中、アメリカ占領時代、現在とまるで4つの世界を生きてきたような三人のオバアが語る半生。主人公・絹子は、少女の頃、人見絹代に憧れ、東京オリンピック(1940年の)を目指したランナーで、沖縄高女から東京の大学を出て、教師となった沖縄女性のエリート。カメは、米軍上陸時、砲弾飛び交う戦場をさまよいながら九死に一生を得、戦後は、市場でたくましく生きながら、一人娘を育てた。ハルは、敗戦直後の占領下、食糧不足に苦しむ人々を密貿易で救った女傑で、その後、那覇の歓楽街でバーを経営。それぞれに波乱万丈の人生を生きていた。
末期がんとなって病院へ転院することになったハルの送別外出食事会で、再び脱走と計画する絹子。だか、そこではアメリカ軍基地の辺野古移設反対のデモに遭遇し、大混乱。はたして脱走の顛末は……。
介護、沖縄の歴史、基地問題といったシリアスで重たい問題を、しっかり受け止めつつ、軽やかに料理しているところが、最大の魅力です。
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