いま、各地で原発の運転差止めなどを求める提訴がはじまっています。それは政治的立場を超えています。しかし、これまでに起こされた20件近い訴訟において勝訴したのは2件のみ。それもすべて上級審で逆転されています。どうしてそうなってしまうのか? 行政学の第一人者が、これまでの判決を仔細に検討し、市民の常識からあまりにも乖離した裁判官の現状を徹底的に批判、あるべき司法への具体的提言を記します。
福島第一原発事故を受け、各地の原発問題訴訟にかかわってきた弁護士らが、国や電力会社を相手取って、運転差止めなどを求めて提訴する動きがあります。
それとは別に2012年10月に入り、電源開発が大間原発(青森県大間町)の建設を再開したことについて、同原発から最短23キロの距離にある函館市の工藤寿樹市長が抗議、原発の稼働条件になるとみられる地域防災計画の作成を拒否。さらに原発工事差止めを求めて函館市として提訴に踏み切る方針を示しました。いまや政治的立場を超えて同時多発的に原発に反対する訴訟が提起されようとしているのです。
しかし、これまでに起こされた20件近い反原発の訴訟において勝訴したのは2件のみ。それもすべて上級審で逆転されています。今後の訴えでも裁判所がどのような判断を下すかを考えると先行きは暗く「司法の壁」は厚いと言わざるをえません。どうしてそうなってしまうのか? それは司法官僚が限りなく行政官僚に近くなり「司法の行政化」が進んでいるからです。行政学の第一人者として日本政治における「過度の行政化」の問題に警鐘を鳴らしつづけてきた新藤氏が、これまでの原発訴訟の判決を仔細に、わかりやすく検討し、市民の常識からあまりにも浮き上がっている「ものわかりのよすぎる司法」の現状を徹底的に批判すると同時に、あるべき司法への具体的提言を記します。
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