日本で報道されるインド関係のニュースは、「ビックリ人間」報道かテロ・災害報道が大半で、旅行番組などでも「悠久の大地」や「豪華なマハラジャの生活」「日本社会が失った活力とカオス」「貧しくとも目の輝く子供」などが繰り返し取り上げられる。
しかし、現実のインドでは、我々日本人が抱え込む苦悩を抱き、同様の社会問題に悩んでいる人がいる。そしてインドのメディアは、近年、このようなインド人のリアルな内面と向き合い、問題の核心に切り込もうとしている。私たちは、そろそろインドに対する特殊なまなざしから脱却し、同じ問題を共有するアジアの隣人としてインドを理解する必要がある。インドと地続きの問題に目を向け、問題意識を共有することが重要だ。
本書では、インドで国内の読者に向けて書かれた雑誌や新聞の記事から現代インドを理解するために重要と思われるものをテーマ別にセレクトし、日本語訳に解説をつけた。本書をきっかけに、インドの新しいリアリティに関心を持っていただき、日本とインドの交流が盛んになることを期待している。
――「はじめに」より
目次
はじめに
第1章 消費社会化するインド
1 中流階級が“亡命”する「ゲーテッド・コミュニティ」
2 食卓を埋め尽くすヘルシーな加工食品ブーム
3 「キレイになる」欲望を満たす美容ビジネスの現在
第2章 劇的に変わった結婚観と家庭像
4 都市の若者は“出会い系”で人生のパートナーを探す
5 4歳で結婚、5歳で未亡人… 幼児婚の犠牲者たち
6 豊かさを享受した10代の若者たちが自殺する
7 “現代流の子育て”が招いた「家庭の崩壊」
第3章 インドの神様は現代人を救えるか
8 霊的な世界に救いを求めるIT業界のビジネスマン
9 現代インド人の心を鞫曹゙「創価学会」と「レイキ」
10 尊厳ある人生を送るために「私はヒンドゥー教を捨てた」
11 中流階級の信仰心をくすぐる贅沢な巡礼ツアー
12 宗教チャンネルが巻き起こすスピリチュアル改革
13 イスラーム聖戦士の素顔は高学歴の“ふつうの学生”
第4章 「インド式」教
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