08年3月14日、チベット自治区の区都・ラサで大規模な暴動が発生し、チベット問題が突如、世界のメディアの注目を集めることとなった。それ以降、チベット問題に関する質問を日本人からされる機会が増えた。このことで私は、日本人の多くが考えているチベット問題と、一般の中国人が思い浮かべるチベット問題には埋めがたい隔たりがあることを、改めて思い知らされることとなった。
例えば、私が中国を訪れたときに見聞きしたまま、「いま北京の人々は、チベット問題よりも物価のことで頭がいっぱいです」「ほとんどの中国人は自分たちこそ犠牲者だと思っています」などと答えると、たいていの日本人は目を丸くして驚いたのだ。
日本人はみな、中国人なら誰でもチベット問題が起きたことでオリンピックの前途を危ぶみ、一喜一憂しながら事の成り行きを見守っていると考えていたようだが、現実はそうではない。日本人が接しているチベットに関するニュースは、あくまで日本人的視点で切り取られたニュースに過ぎないのであって、中国人が見ているものとは根本的に違っているからだ。
――「本文」より
目次
序章 中国メディアの現在
第1章 中国経済の危うい実態
1 経済の“構造転換”に迫られる中国
2 中国ははたして“アジアの米国”になるか
3 グリーン産業が膨大な不良債権を生む?
4 出稼ぎ労働者を苦しめる治安の悪化
第2章 変容するナショナリズム
5 いったい誰のためのオリンピックだったのか?
6 中国人の“大国意識”をのぞく
7 “略奪ブロンズ像”をめぐる反仏キャンペーン
第3章 上に汚職あれば、下に不正あり
8 “汚職天国”中国で官僚の摘発が進む「裏事情」
9 政府の庇護のもとで暴利を貪る“十大企業”
10 官僚の“ムダ遣い”に支えられる中国経済
11 侮れない「ウソから出た実」
第4章 社会に蔓延する黒いストレス
12 ネット時代の魔女狩り――過激な「人肉検索」
13 軍人襲撃事件でわかった社会に蔓延る“病巣”
14 日本のメディアではわからないチベット騒乱の“
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