京都発―
十六代桜守(さくらもり)・佐野(さの)藤(とう)右衛門(えもん)と洛北(らくほく)・能見(のうみ)の陶工・小松(こまつ)華功(かこう)が紡ぐ、
器(うつわ)に甦(よみがえ)るさくらの生命(いのち)。
京都迎賓館・中庭を飾る「桜の大皿」は、桜守と陶工の不思議な出会いを発端に、長年にわたり多くの桜のやきものを作り続けてきた二人の大仕事であった。
藤右衛門邸で出る灰は、まず染色家・志村ふくみさんのところへ運ばれ、染色の灰汁(あく)を抜いたあと、残りの灰を小松華功さんがいただき、やきものの上釉(うわぐすり)に使うという循環が生まれていた。
迎賓館の大皿をはじめ、さまざまな桜の意匠を映した茶碗(ちゃわん)・深鉢(ぶかばち)・菓子鉢(かしばち)・角皿・丸皿・銘々皿・香炉(こうろ)・香合(こうごう)・向付(むこうづけ)・汲出(くみだ)し・箸洗(はしあらい)・行灯(あんどん)・花器(かき)等作品の美しい写真が並ぶ。
また、京都「祇園(ぎおん)の夜桜」「常照皇寺(じょうしょうこうじ)の桜」「嵐山(あらしやま)の桜」。さらには「山高(やまたか)神代桜(じんだいざくら)」「荘川桜(しょうかわざくら)」「高遠桜(たかとうざくら)」等各地の桜の風景と物語を掲載。
さらには、京都を代表する〈円山(まるやま)公園(こうえん)内〉未在(みざい)・〈銀閣寺(ぎんかくじ)畔〉なかひがし・〈花背(はなせ)〉美山荘(みやまそう)のそれぞれの主人たちが創意工夫した季節の料理を器に盛り付けして紹介する。
巻末には「桜の縁(えにし)を語る」として佐野藤右衛門・志村ふくみ・小松華功の鼎談。「器を語る」は柳孝(やなぎたかし)・加藤(かとう)静允(きよのぶ)・小松華功の鼎談。「手の技を語る」では佐野藤右衛門・寺久保進一朗・梅木喜寛・中澤成彦・小松華功の座談会が収録される。
桜の花はもちろん、やきもの・陶器への興味の尽きない一冊になっている。
こころ浮き立つ、桜の宴の一冊である。
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