反骨の詩人、金子光晴 親子3人の未発表戦中詩集! 戦争暴力への激しい嫌悪と深い愛情に満ちた家族へのオマージュ。 ボコよ。 おまへの愛したものは いつまでもおまへを待つてゐるよ。 ――十万人の兵ではどうにもならぬ とボコが口ぐせにいつてゐたが そのとほり、 暴力にはかなはぬよ。 父とチヤコとボコと三人そろひの 厚手の紅茶茶椀の その一つは伏せたまゝ。 ボコとは縁ふかい父とチヤコは けふからボコを待つだけの 待遠い一日一日を送るのだ。――<「待つてゐるよ」より>