その文学と思想のオリジナリティーによって戦後日本に屹立する埴谷雄高。同じく独自の思考によって日本の思想界をリードしてきた著者の半世紀の集大成。
孤高の文学者・埴谷雄高と『死霊』への徹底的追究!
三輪家の子どもたちが、嫡出子と婚外子の区別なく共有するものは、うまれてこないほうがよかったという気分である。そのなかで主人公三輪与志は、しかしうまれた以上、あたらしい生をみずからつくることなく、すでにうまれたものを殺すことなく、自分をおわりまで味わってみよう、という考え方にむかう。(中略)その過程で、生きることにともなう不快を味わうことを、自分が生きる原動力にしたいと思っている。――<「『死霊』再読」>
加藤典洋「六文銭のゆくえ――埴谷雄高と鶴見俊輔」(書き下ろし58枚)
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