桜田門外の変、箕輪心中……歴史はいつも小さき者たちを弄ぶ。 昨日までは人並みだった。 今日でずいぶん歳をとった。 江戸市中で懸命に生きる人々の運命の1日――全4篇。 祖父の辞世は句である。 妻と孫あとに遺して菊見かな 佐代の前で泣くのは恥だと思ったが、思ったときはもう涙が頬を伝っていた。(中略) 長い長い1日に遭遇した数々の出来事、多くの人々、さまざまな思い。それらをどう肚におさめ、これから先いかに生きてゆくのか。15の若者には考えも及ばなかった。――(本文より)