その日、2人は椿の枝を残して消えた。その夜、藩内抗争の火蓋が切られた。 藩権力に翻弄される下級武士たち。その中で、若き剣術師範は、手探りしながらも誠実に生きようとする。待望の書下ろし長編時代小説。 7歳で父の組子・瓜生仁左衛門に預けられた禎蔵は、剣術に自力で這い上がる道を見出し、出世した。しかし、否応なく藩内の大きな力に巻き込まれていく下級武士の悲哀を身近に感じながらも、幼なじみの失踪と、父の死の謎を問い続ける。