心の原風景を求めて
『犠牲』『「死の医学」ヘの日記』のパートナーふたりが自らの原点を探るduoエッセイ。自己形成のはじまりの瞬間へ分け入り、記憶の深層に眠る情景を掘り起こす。
柳田 自分の原風景探しって、誰にとっても関心事だと思うんです。ひとりで内面を探索するのもいいけれど、表現方法の違う人と刺激し合いながらやってみるのも、意外な発見や展開があっておもしろいだろうというんで、この企画が生まれた。
伊勢 自分探しの旅というのは、いろいろなものを捨てて行くものではないんです。じつは「今」を意識しながら、幼少期の原風景まで戻って行くみたいな旅です。5歳のとき感じたものを思い出すことはできても、今はそのときとは絶対違う歩き方で同じ風景を感じたり見たりしている。そういう意味では一見、後ろを向いているようでいて、本当は前向きの姿勢なのではないかと思うんです。
柳田 そうですね。原風景を探すといっても。それは後ろ向きに昔を回顧するわけじゃない。今の自分の存在理由を確認する作業なんですね。
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