男たちが殺し合うなら、女は情を尽くし抜く──。
三国時代が終わり、新たな動乱の世を迎えた。洛陽の都で数10年ぶりの再会を果たした姉妹の上にも、運命は容赦なく襲いかかった……。
表題作ほか「趙氏春秋」「曹操と曹丕」など抒情あふれる中国短編小説集。
明日は都へ入ると思うと、おのずと心が引き締まり、そのために眠れないのだろうかと、春暉(しゅんき)はおのれの心をふり返ってみた。50年、生きてきた間には、幾度も憂い目、辛い目に遭い、人並よりは肝も据わっているつもりだったが、それでもこんどばかりは、いくらか怯(ひる)みを覚えるのだろうか。
もう幾年も、春暉は都にいる妹に、手紙を送り続けてきた。……けれどもただの1度も、返事はなかった。その妹を、春暉は訪ねようとしている。果たして妹に会えるだろうか。──(本文より)
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