最愛の母が次第に呆けてゆく
母を看取り、ともに過ごす最期の日々――
「悔いのない、人との別れなんてない……」
ひたすらに「生と死」を見つめてきた著者が描く人生の哀歓!
どんなに苦しくとも背すじを伸ばし凜として生きてゆきたい!!
晩年の母は、何度も、母親に会いたいといっていた。80歳を過ぎた母が、40年近くも前に亡くなった母親に会いたがる心の内が、当時の私には、よくわかっていなかった。笑い飛ばしたこともある。
しかし、それがいまはよくわかる。考えただけで、涙がふきこぼれるほどに、よくわかる。できるなら、いのちの河をさかのぼり、いま一度、私も母に会いたい。切に会いたいと思う。
「悔いのない、母親との別れなんてないんだよ。親っていうのは、子どものことなら、どんなことだって、許せるものなんだ」
和尚さんは、悔い多い私を、慰めていわれた。
より身近にいた者が、より深く後悔するものなのだろうか。――(本文より)
長いこと癒しがたい思いを抱えて、生きてきた。そんな自分と、ひたすらに向かいあって、ようやく原稿を書き終えた。
先が見えないときこそ、歩きつづけなければならない。そんな言葉を聞いたことがある。まさに、そうだった。見えないなかで、どれだけの人が、陰になり日向(ひなた)になり支えつづけてくれただろう。気づかずにきたたくさんのことがあったと思う。
いまは、いのちあるすべてのものに、出会ってきたすべての人に、そして、この本を手にしてくださったあなたに、心から感謝申し上げたい気持ちでいっぱいである。――(あとがきより)
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