浅田次郎が初めて書いた、著者自身の感動の物語 会いにいきたい、あの日の君に。 輝かしい青春を、僕らはこの町で生きた。 霧はいよいよ深く、明子(はるこ)の髪を隈取る街灯をぼんぼりのように滲ませていた。 まったく唐突に、祖父の訓(おし)えをひとつ思い出した。その口ぶりを借りれば、「男てぇのは別れのセリフだけァ、惚れたとたんから決めてなきゃならねえ」のだそうだ。──「霞町物語」より