精神科医・家族機能研究所代表斎藤学氏が推薦!!
[この本には、他人や世間に価値を見いだされることを生きがいとし、そのために苦闘し、煩悶するという、現代を生きる女性たちの1つの側面が、「ありのまま」に写されている]
この本はパニック障害に悩む32歳の女性が、自分の体験を率直に述べたものである。パニック障害というのは、「予期しないパニック発作」が日常生活の中に頻々として生じ、そのために通常の社会生活が送れなくなるという一種の病気のことである。私の記憶では、いずみさんははじめから「私はパニック障害です。」と自己紹介していたような気がする。長い病歴の間に、心療内科医の1人が正しい診断を彼女に告げていたのだろう。診断はついたが、治療がうまく進まないということで、私たちのところへ来た。私は他の患者と同じように、児童虐待の有無を尋ねた。とくに混乱のない家族のもとで育ったと彼女は言っていたが、詳しく聞いてみると、この本の第1章にあるような問題を抱えた家族だった。彼女に対する情緒的虐待があった、と私は判定した。――本文より抜粋
私のクリニックを訪れる人々の多くは、自分をアダルト・チャイルド(AC)であると言っている。(中略)
私は、彼らに過去の悲惨な物語を話すことを求める。医師である私にだけ話すのではない、大勢の仲間を「誠実に耳を傾ける」「安全な」聴衆と見なして語るのである。
涙と怒りの中で過去を追想し語るというこの作業は、グリーフ・ワーク(悲嘆の仕事)と呼ばれる。しかし、この物語は徐々に変化し、やがて未来の自分を含めた確固とした自己像を持つようになる。そして、そのころには、あれほど頑固だった諸症状も、出てくる必然性を失っている。
こうした作業の一環として、手紙や自伝や劇画を持参してくる人々も多い。それぞれが波乱万丈の物語であり、そのすべてとは言わないが、読者としての私を感嘆させるものもある。(中略)
この本は他人(世間)に価値を見いだされることを生きがいとし、それを目指して苦闘し、煩悶するという、現代を生きる女性たちの1つの側面を「ありのまま」に写している。――本書5ページより抜粋 斉藤学
+ もっとみる