演劇人として自らの道を生きた寡黙な夫。おしゃべりで野の花と山を愛する作家の妻。
敬愛し連れ合って62年の人生と心のうちを語るエッセイ集。
自分のそばに、自分の心をわかってくれる人がいる。それほど有難いことはなかった。自分が、夫がいなければ駄目、ということも、よくわかってきた。ここに収めた文章は、それぞれ2人の心と歴史を語っていて、私は、自分の我儘を通し、後悔をくり返し、すみませんと、最後に頭をさげてきた。夫は、人間が死ぬということも教えてくれ、自分の生き方を教えてくれる。怠ることはできない。彼の期待にこたえて、私は自分のいのちを、よりゆたかに生きねば、と毎日おもっている。――本文より――
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