「史記」の中で最も美しく感動をよぶ物語!
漢の王室入りした姉とさらわれた弟の運命的再会を、格調高い文体で描く名品!
「姉はわたしどもを残して西へ去るとき、伝舎で別れました。姉は洗髪の道具を借りうけて、わたしの髪を洗ってくれました。また、食べ物を請うて、わたしに食べさせてから、去ってゆきました。」広国(こうこく)がそういったとき、衝立(ついたて)の倒れる音がした。たまらなくなった猗房(いぼう)は、衝立にもたれかかり、それを倒すと、「広国――」と、嗄れた声で呼びかけながら、あたりの者はまるで目にはいらず、ひたすら弟に走り寄ってかれを抱きしめた。「姉さん」広国の声が感激でふるえた。――侍御(じぎょ)左右、皆、地に伏して泣き、皇后の悲哀を助く。
と、司馬遷は「史記」で描写している。――(本文から)
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