のこされて生きる人たちの哀しみと見果てぬ夢。女と男の生死をみつめ言葉の重さと生命の意味を問う渾身の書下ろし傑作長篇小説 もしも自分が死ぬときには、最後に残された力をふりしぼって、あの「蜉蝣の箱」の蓋を開けることにしよう。すると、今夜のいくつもの声や言葉が、エロティックにゆらゆらと立ち昇っていき、自分のいのちもまた、それらを追いかけて蜉蝣のように軽やかに、大気の中に溶けこんでいけるかもしれない……──(本文より)