アンネ・フランクからあなたに

アンネだけがナチスの犠牲になったのではありません。しかし、わたしたちはアンネの存在をとおしてはじめて、無残に殺され、地獄の苦しみを味わった600万人ものユダヤ人たちの個人の悲劇や時代、そして民族の苦難を理解することになるのです。

差別のない平和な世界――。それこそがアンネの切なる願いでした。戦後、ナチスの残虐行為があきらかになったとき、世界中が恐れおののき、2度とこの悲劇をくりかえしてはならないとだれもが思いました。ところがどうでしょう。いまだに世界各地では、ユダヤ人差別だけでなく、さまざまな民族差別や紛争があとをたちません。残念ながら、アンネの悲劇はけっして過去のことではないのです。――（あとがきより）