吉川英治文学新人賞受賞作
本質的にSF作家だなあと思うのは、医学や科学の解説的な叙述が解説に終らず、どうしようもなくテーマに結びついていく構成力にあります。たとえばクロスバ交換機の説明も、あとでデジタル交換機との切り替えの夜、継電器のカチカチという音がいっせいに消える感動的な場面で生きてくる、といったようにです。ペニス、釣り竿、ジャムパン、ラジコン、スプリング、過剰なほどのさまざまなフラグメントにこだわる文章が次第に重層的になり、それらのことばが積み重なっていってラストに近づくほどシュール・リアリズムのような感覚の文章になっていく文学性が、こたえられません。──筒井康隆
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