初めて訪れた、青春。
「純粋培養」された志穂子は、ひとを愛する喜びと苦しみを知り、ひとりの女性として歩み始める……。生命(いのち)の歓びを謳(うた)う、長篇ロマン!
「ここに地終わり 海始まる」の若い主人公を幼児から18年間も結核という病気で封じ込めたのちに、大都会の汚濁の渦に放り出したのは、私が、この小説の主人公を豊かな人格をもつ幸福な女性にしたかったからなのですが、はたして、彼女が幸福になったのかどうかは分明ではありません。なぜなら、私は彼女を「過程」、もしくは「途上」で置き去りにして筆を擱(お)いたからです。幸福を願いつつ、小説の幕をおろしました。──「あとがき」よ
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