「きみは、人類という立場に立てますか?」日本占領下の北京で出会った中国の友は、謎の問いを残し戦地に消えた。またある友は、文化大革命で迫害を受け窮死。41年の歳月を経て、青春の地・北京に還った作家は、彼我を隔てる深い歴史の暗渠に立ち竦みつつ、その底になお輝きを放つ人間の真実を探してやまない。日中の狭間に生き、書いた中薗の深い想いが結晶した代表作。読売文学賞受賞作。
北京、わが痛みと愛
「きみは、人類という立場に立てますか?」日本占領下の北京で出会った中国の友は、謎の問いを残し戦地に消えた。またある友は、文化大革命で迫害を受け窮死。41年の歳月を経て、青春の地・北京に還った作家は、彼我を隔てる深い歴史の暗渠に立ち竦みつつ、その底になお輝きを放つ人間の真実を探してやまない。日中の狭間に生き、書いた中薗の深い想いが結晶した代表作。読売文学賞受賞。
藤井省三
中薗英助一生のテーマは、越境者として歴史を語ることであった。1937年、17歳にして中国に渡って放浪語学生となり、40年に北京邦字紙の学芸記者となるかたわら同人誌で小説を書き始め、やがて45年の終戦を迎えて大陸二世の日本人女性と結婚、46年に東京へ引き揚げたという彼の青春は、日本の中国に対する全面侵略戦争とそのまま重なっており、中薗文学に国境を越えた視点から現代日中間の歴史の記憶を描くという生涯の課題を与えたのだった。――<「解説」より>
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