敗戦直後、上野のガード下の闇市で、主人公の「わたし」が、浮浪児がキリストに変身する一瞬を目にする「焼跡のイエス」。少女の身に聖なる刻印が現われる「処女懐胎」。戦後無頼派と称された石川淳の超俗的な美学が結晶した代表作のほかに「山桜」「マルスの歌」「かよい小町」「善財」を収録し、戦前、戦中、そして戦後へ。徹底した虚構性に新たな幻想的光景を現出させた、精神の鮮やかな働きを示す佳作6篇。
戦前から戦後へ。
精神の運動の輝かしい軌跡を描く秀作6篇。
敗戦直後、上野のガード下の闇市で、主人公の「わたし」が、浮浪児がキリストに変身する一瞬を目にする「焼跡のイエス」。少女の身に聖なる刻印が現われる「処女懐胎」。戦後無頼派と称された石川淳の超俗的な美学が結晶した代表作のほかに「山桜」「マルスの歌」「かよい小町」「善財」を収録し、戦前、戦中、そして戦後へ。徹底した虚構性に新たな幻想的光景を現出させた、精神の鮮やかな働きを示す佳作6篇。
立石伯
石川淳の現実や時代と切り結び、闘いつづけた精神の軌跡は、一言でいえば、仮定から仮定へと飛翔するダイナミックな言葉の響きあう波動と延々とつづくその努力の線上にくっきりと刻印されている。原稿用紙にひとたび書きはじめられた言葉の力は精神の磁場を形成し、そこに生みだされた質量をバネにしながら、現実の闇のなかをペンが発明に向けて運動していくものにほかならない。――<「解説」より>
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