小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め、暮らしと文学をテーマに綴られた90篇。多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ40歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。
“自分の掌でなでさすった人生を書く”庄野ワールドの原点!
小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め、暮らしと文学をテーマに綴られた90篇。多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ40歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。
高橋英夫
『自分の羽根』は庄野潤三の「生き方」「交わり方」のとりどりの見本帖としても読むことができる。私がこれは楽に読みうる本ではあるが、「実は手ごわい1冊である」と書いたのは、そこに関係することだった。「書くこと」と「読むこと」と「日々を生きること」――そのすべての分野を、自分にとって一番相性のいい「短さ」でもって射当て、すくいとり、そのどれをも庄野潤三的世界の一片たらしめていった本、ここに庄野潤三の原型があらわれていた、この思いと共に人は『自分の羽根』を読み終って、ある充実感を味わうのだ。――<「解説」より>
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