敗戦直後の焼け跡・東京で、ウニ三という正体不明の男が、どぶにはまって変死。その位牌は、まるで死のバトンの如く引き受けた男たちに、つぎつぎと無造作な死を招き寄せる。絶対的価値が崩壊した後、庶民はいかに生き、いかに死んでいったのか? 独白体、落語体、書簡体など、章ごとに文体を変え、虚無と希望の交錯する時代を活写。『軍旗はためく下に』の戦争テーマを深化した、純度高い傑作。焼け跡闇市に生き、死んだ、無名の人たちへの哀歌! 吉川英治文学賞受賞作品。
◎常盤新平 『終着駅』に登場するのは敗戦直後の焼け跡にうごめいているその日暮らしの人たちです。彼らの生と死が章ごとに変わる文体で語られていきます。独白もあれば、落語の話術、返信のない手紙の連続、饒舌と多彩です。(中略)『終着駅』は推理小説仕立てですが、推理小説という枠を借りてその枠をこえてしまった小説なのです。結城さんは敗戦直後の体験をもとに自分の「終着駅」と思いさだめた小説を書いたのです。(「解説」より)
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