川端康成から壺井栄まで“昭和”の光と影を映し出す名品20!
「赤い鳥」により芸術性を獲得した童話は、昭和に入ると、「少年倶楽部」に代表される大衆化の道を辿った。一方、子どものリアルな現実をとらえる生活童話が書かれ、宮沢賢治、新美南吉など童話作家も登場、独創的な日本のファンタジーが誕生した。お伽噺から文芸の豊かな1ジャンルに変貌をとげる時代の、川端康成、林芙美子、太宰治、坪田譲治、室生犀星、壺井栄など19作家の名品を収録する。
千葉幹夫
「童話の読者が誰であるか……相手は子供であつて文学青年ではない。そこで今日の童話は、物語性を取り戻す事に努力を払はねばならない。大人の文学が物語性を持たないからとて、どうしてそれを真似る必要があらう」(新美南吉/1941年)
昭和の児童文学は困難な時代と共に歩みながら、決して未来への希望を失うことはなかった。また、大正期の童心主義童話と異なり、物語性も獲得した。(略)大人と子供を同時代の目で見るという文学の重要な視点も持ち得たことは、昭和30年代中葉からの高揚期を迎える為に重要な点であった。――<「解説」より>
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