2.26事件、戦争、召集、労働運動、差別、左翼文学、東欧民主化、フェミニズム、エイズ……。1931年から1992年までの、ある年ある月の出来事を手懸りに、当時の時代相を鋭く抉り、人間の生き方を問い直す12の物語で構成された短篇オムニバス「十二か月物語」。俗情との結託を排し、厳格で論理的な文体により、時代の流れと生の意味の根源へと遡行する意欲作。
鎌田哲哉
大西巨人が自らの短編で絶えず提示したのは、「ひとりで立つ」ことを試みる者達が、互いの差異を維持しつつ古い言葉を破砕され、新たな言葉と出会って行く活動の原光景なのである。だが改めて考えれば、それは他ならぬ『神聖喜劇』の様々な急所にも存在したはずだ。――<「解説」より>
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