1954年初刷刊行以来絶讃され、実験的実作による研究成果が盛り込まれ、増補改訂が加えられた。「できるだけ分かりやすい形で、文学の形式、その感動、その文体、他芸術との比較」の諸点から一般読者に向けて書かれ、1979年には40刷の版を重ねた。<芸術とは何か>を追求した伊藤整の文学理論を集大成し、文学の本質を平易に解きあかした文学入門書の白眉。
近代日本文学という、世界文学の中での特異な性格の芸術を、ヨーロッパ文学と比較して考えてゆくあいだに、両方の条件を満足させるところの文学の本質というものを、想定せざるをえない立場に追いこまれた。それで私は、近代日本文学、とくに私小説とヨーロッパ文学とを同時に満足させうるところの、芸術の本質は何かということを、追求した。――<「あとがき」より>
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