世に捨てられ老残の人生を送る著名な元雑誌編集者、不遇な映画監督、漂流する中国人青年、不器用なテレビ・タレント、都電、急激に変貌する東京の街……。1960年以降、喪失してしまった日常の深部の塊は、雑文書きを狂言回しにして増殖してゆく。「隅の老人」「北の青年」「路面電車」「ホテル・ピカディリー」「街」など<時代の違和>を描く連作短篇小説7篇。
坪内祐三
素晴らしい短篇集だと思った。完璧な作品集である。純文学(芥川賞的作品世界)であるとか読物文学(直木賞的作品世界)であるとかいった枠組みを越えて、まさに文学である。その作品世界の味わいは、例えば、アメリカのジョン・チーバーやジョン・アップダイクのそれに似ている。チーバーやアップダイクはいわゆる『ニューヨーカー』派の作家であるが、実際『袋小路の休日』に収められている連作短篇は、発表当時、そのまま英訳されて『ニューヨーカー』の誌面を飾っていたとしても何の異和感もなかっただろう。――<「解説」より>
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