焼跡の一軒家で起きた貧しい女の悲惨な自殺を凄艶な美へと昇華させた女流文学者賞受賞作「鬼火」、隠れ切支丹の遺児であった修道女の謎めく焼死を追った「童貞女(びるぜん)昇天」等、幻想的短篇7作に、薄幸な俳人の生涯を意欲的に掘り起こし、温かい筆致で描く「底のぬけた柄杓」等、俳人論3篇を併録。少女小説、新聞小説の世界で一時代を劃した吉屋信子のもうひとつの魅力をあますところなく示す精選作品集。