シベリア経由でヨーロッパから日本に戻った矢代耕一郎は、パリで1度は断念した心寄せる宇佐美千鶴子と再会をする。日本の伝統を求めて歴史を溯り“古神道”に行き至った矢代は、カソリックの千鶴子との間の文化的断層に惑う。それぞれが歩む、真摯に己れの根っこを探す思索の旅。晩年の横光利一の「門を閉じ客の面会を謝絶して心血をそそいだ」(中山義秀『台上の月』)最後の長篇思想小説。