作家御木麻之介の平凡で静かな生活は、宿命的な過去に纒わりつかれ、次第に崩れてゆく。妻順子、息子好太郎、娘やよい、嫁芳子、娘の婚約者、友人の娘と愛人……。複雑に入りくんだ人間関係、怨念と狂気に搦めとられ人生の亀裂の間に生きる人々。平穏な日常に生と死を透視させ、生命の根源的なテーマを淡々と描く問題作。長い中絶の後晩年に完結、没後単行本刊行された傑作長篇。