幼い時期の記憶の断片――女になり替りたい願望、金を盗んだ罪の意識、父との確執と、母への思慕。それらを、主情的な回顧としてではなく文献、再訪、知人らの証言で修復し、確認しつつ幼い精神の形成されゆく一過程として提示した自伝。死者への鎮魂の名著『レイテ戦記』の著者の透徹した知性、清冽なる精神の拠ってきたる源泉。