愛する男女が抱える心の哀しみ、そして絆。 母は決まってこう訊いた。「何か聞こえはせなんだか?」墓所へ向かう峠の道で毎年、必ず。記憶の暗部を抉る表題作の他、鎌倉の坂道で交錯する男女の想いを透徹した文体で描く「化粧坂(けわいざか)」、19年ぶりに再会する娘へ心の揺れを感じる「聖夜」など男と女の生きる哀しみに迫る傑作集。伊集院ワールドの輝く結晶。