古代において〈狂〉とは、神に魅せられた状態であった。また芭蕉の、止みがたい漂泊の思は「そぞろ神の物について心を狂はせ」た結果であろうか。無常の世に棲む人間はその哀しさに耐えず、さまざまな〈狂〉を演ずる。その夢の世を、むなしく凝視しつづけた日本人の系譜を追って、現代の〈狂〉を予感させる名著。 精神史として〈狂〉を初めて位置づける名著〈狂〉とは人間が神的なものとの対話を知覚する心情、ある意味では人間そのものである。夢の世を虚しく凝視しつづける詩人の系譜を追い、現代の〈狂〉を予感する