言葉の力で他人を魅惑しようと努めながら、真の書き手となり得ない作家の、12の物語。確実不変な事実の世界は、存在するのか? ーー事典に載せられた単語のように、不変で確実な〈事実の世界〉は、存在するのだろうか? 物質の欠如が夢想へと駆立て、言葉の虚構性のなかに、夢見る力を委ねようとするが……。言葉の力で他人を魅惑しようと努めながら、自ら物語るという行為を怖れる書き手、作者と作品の奇妙な関係を描く、12の短篇集。