乱に明け乱に暮れる南北朝末期、南朝に味方して敗れた熊谷義直の一党は伊那谷を急襲した。残虐非道の限りを尽くし、近郷を斬り従えるしか、彼らが生きのびる道はない。だが、奪い取り、妻に直した女が山伏に犯されたとき、義直の心に狂気が宿った。――当代の鬼才西村寿行が放つ、初の長編時代伝奇ロマン。