至上の超越者「死」に対し、解決を図る人間の文化的営み
至上の超越者である「死」を、人間はどのように文化の中に組み込んできたのだろうか。神秘としての死は語りの対象となり、さまざまなイコンのうちに視覚化され、儀礼的演技の中で操作されるようになる。儀礼と社会構造との関係、霊魂やあの世観念の内容など、ボルネオ、スラウェシの事例をもとに、個別文化を超えたところにある人類の共通項・普遍項を導き出す。
我々がここで試みようとする死の人類学は、この超越者に対する人間の態度を描こうとするものである。死を死として語ることはうとましい。しかし、だからこそ、死に対する態度のなかに人間の生の営為の狡智が隠されているともいえるのだ。その意味で、ここに展開することは死の人類学であるとともに、すぐれて生の人類学でもある。――<本文より>
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