座とは何か。日本独特の文芸形式である俳諧の本質は、人の和をもって始まり、それをもって終わる。すなわち、俳諧における座とは、文芸的な人間連帯である連衆心(れんじゅしん)を営んだ場である。孤独を自覚する者同士が、日常性とは別次元の関係でつながり、生きる楽しみを共にする。俳聖・芭蕉にとって座こそ、その詩情を誘発し、増幅し、普遍化する、いわばかれの詩の成立に不可欠の媒体であったと説く名著。
この『座の文学』という労作は、俳諧というものが、根本的に「睦み合う連衆心」の産物であり、孤高の態度で他者を見くだし、拒絶する行き方とは正反対のものであるゆえんを、感嘆すべきねばり強い説得力をもって説き明かしている。(大岡信・解説より)
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