――一般には備忘録の寄せ集め風に考へられてゐる滞欧詠や、何となく埃臭い印象の満関支詠に意外に興味津津の素材が犇き、画期的な文体が散見できることに改めて目を見張った。外国語頻用も特徴の1つである。必ずしも留学作品に限らず、帰国後の日常詠も幻惑的な横綴りを鏤める。世界のいづれの地に赴いても、過たず対象の本質を直感して作品化する、あの抜群の言語感覚は羨ましい。(著者・跋より)