イスラムの<嫌西欧>はどこで生まれたのか
イスラムへの<違和感>の核心にあるものは何か
この時代は、中東が「近代化」された時代である。と同時に、ヨーロッパ列強に「植民地化」された時代でもある。この時期、イスラム世界はヨーロッパと本格的に邂逅し、それとの格闘のなかで、自らを近代化するも、結果的には、その支配下に置かれるようになる。この時代に、中東における「ヨーロッパとイスラム」の原型がつくられた。
なぜイスラム教徒は近代文明に反発するのか?
現在、毎日のように、イスラム教徒の過激な政治行動が報道されている。かれらは近代文明を拒否しているかにみえる。もちろん、近代文明を戦闘的に拒否しているのは、一部の過激なイスラム教徒である。圧倒的多くのイスラム教徒は、かれらの過激な政治行動を苦々しく思い、近代文明における生活スタイルにあこがれてさえいる。しかし、そのかれらも、過激なイスラム教徒の主張に相通じる怒りと反発を秘めている。一部の過激なイスラム教徒を例外とし、一般のイスラム教徒と切り離しては、問題の解決にはならない。一体、かれらは近代文明の何に反発しているのか。どうして近代文明に反発するようになったのか。本書は、その答えを、イスラム知識人における近代観の変化に探り、かれらのアイデンティティ危機の深化の過程として描くことを目的とする。それは、近代がかれらの意識下においてトラウマ化する過程であった。――<本書より>
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