帝への授戒、女人禁制、政争、天災
天台僧かく語りき
新資料「鎮増私聞書」で読む戦乱の中世
南北朝合一、明徳・嘉吉の乱……戦乱の中世を生きた1人の天台僧の記録「鎮増私聞書」。そこから浮かびあがる仏教界と庶民の姿とは。
南北朝合一──これからしばらくお話しいたしますのは、わたくしの存命中に起きましたさまざまな世の動きについてでございます。……わたくしが「私聞書」でこのような世間の動きや乱れを語ったことには理由があるので、単に物見高い者が書き付けておいたというのとはわけが違うのです。わたくしは、この短い間に次々と起こった世の動きをすべて一連のものと考えております。仏教では、物が起こるには必ずその理由がある、と言います。つまり「因」と「果」でございますね。わたくしは俗世のことに疎い者ではありますけれど、一在地民として赤松氏と幕府の関係を見てみると、ある事は起こるべくして起こったのだ、という感を強くいたします。……わたくしの意図は、赤松氏滅亡に至るそのなりゆきを追うことにあったのです。それによって、わたくしたちの生きている世の中が「如夢幻泡影」(夢幻のように、泡の影のようにはかない)であることを示したい気持ちもあったかもしれません。──本書より
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