歴史の中の「いま」という瞬間を真摯に生き、実践的に問うこと。21世紀の知的課題はここから始まる。
事件の合理性と偶然性──命を重視する考え方は、現代に近づくほど、ややもすれば歴史の複雑さを解釈する作業から逃避したい人間にとって魅力あふれるものとなる。しかし、現代人はカフカの世界を通して歴史を眺めるわけではない。……現代人は「平家物語」の時代に生きた祖先たちと比べるなら、歴史の原因との関係においてもっと明示的な探求を余儀なくされるだろう。──山内昌之
ベンヤミンの「パッサージュ」──「いま」という時代に人びとが下すべき判断や評価の中に、現在の瞬間を真摯に生きるものだけが構想しうる虚構の物語ともいうべきものがかたちづくられ、それへの確信というか、理念的な賭けのようなものが、ときとして、のちに生きる人びとの思考と「いま」の人びとのそれとを通底させることがありはしまいかということなのだ。──蓮實重彦
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