愛とはかくも、もろいものだったのか。死病の床で夫の先妻利加(りか)が口にした1つのウソが、順子(じゅんこ)を疑惑の底へとつきおとした。夫への愛と信頼がくずれてゆく。幸せはもう取り戻しようもない。……表題作のほかに、「赤い帽子」等3編を収録。底知れず弱い人間の姿を、愛憎と死の局面から正視する力作中・短編集。