たった2回会ったきりの売れっ妓女郎と逃亡人足の心中。貧しさゆえに花街に身を沈めた花衣と佐渡金山の人足・直吉、肉体と魂をボロ布のようにこきつかうしかなかった二人の絶望的な愛を受けとめるのが、暗くうねる海だけだったとは……。苛酷な運命に翻弄される男女の姿を描いて、愛の意味を痛切に問う長編歴史小説。