「自己をみつめる」――やさしいようでむずかしい。不安や孤独、憤りや自己嫌悪に悩む私たちが、どうしたら正しく自己をみつめ、文明に疎外されない真に人間らしい生き方を、身につけられるのか。心と体をつなぐ心身医学は、人間におきる“眼に見えない異常”を探り出し、心のひずみが招く病気を治し、自己実現へと導く。こうして、自分にある可能性に気づくとき、だれもが、生きる喜びの無限に大きなことを発見する。著者の豊富な人生体験からつづられた本書は、1つの人間形成のすじ道を明らかにしてくれる。
体にひそむ心の病い――私たちは、常に眼に見える体の変化を通して、人間の心を、具体的にとらえることができる立場にある。またそのような微妙な心の変化が、体に投影されたものを、細かに観察することができる。こうした科学的な基礎に立って、人間の病いを見てくると、その背後には、ありとあらゆる人生問題がひそんでいることに気づく。そして、体の症状を医学的に処理すると同時に、その陰にひそむ心の問題にも、そのなり立ちを正しく分析することによって、科学的な治療や、自己改造が可能になる部分が、思いのほかに大きいことを知ったのである。――まえがきより
書評より――慶応大学助教授 小比木啓吾(本書より)
心で起こる体の病いというコトバが、滲透したのも、ひとえに、本書の著者池見酉次郎教授の精力的な啓蒙活動にあった。とくにこの『自己分析』では、医師としての教授の深まりが、人間の深まりとしてあらわされ、ありのままの姿で、人々に語ろうとした姿勢が、うかがわれる。たしかに読者は、本書を通して、肉体から心への道を、著者と共に歩みながら、それが1つの人間形成の体験過程となっている事実に気づいて、驚くことだろう。またそれは、東洋と西洋とを統合した日本的な心身医学が、どのように成長しつつあるかをも、暗示している。――「週刊読書人」掲載
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