直美は、姉の夫である坂庭に、女として初めてのからだを開いた。人間にはあらゆることが起こり得るという、悪魔的な期待が、若い彼女の心をくすぐった。そのくせ、愛は、どこかで自分を待っていると信じていた。そんな彼女の前に、純情なボーイフレンドやシニカルな中年男の、熱く光る眼差しがあった。ある日、陶酔する官能と乾いた心の背反の中で、直美は義兄への殺意を抱く。自分をなにものかに証明するように……。という、女の深部にひそむものを、繊細な手つきで、あますところなくえぐり出した著者の代表作「魔性」の他に「悦楽」「消えた表情」「傾く旅」を収録。
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