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中世初期の所領経済と市場

大きな転換を遂げつつある西欧中世社会経済史の研究を踏まえ、アルデンヌ、およびパリに所在する四つの修道院所領を、そこに内包される市場に着目し生産と流通の両面にわたって具体的に再構成した野心作。自給自足的な閉じられたシステムとしての所領という従来の学説を拝し、所領相互、あるいは周囲社会との交流を通じて多様な社会階層が垂直的に、さらに複数の地理的単位が空間的に統合されていたカロリング期社会の全体像が、史料を駆使して鮮やかに描かれる。

【目次より】
目次
序論 課題の設定
第一章 文書類から見たスタヴロ・マルメディ修道院の所領空間
はじめに
一 所領の骨格
二 所領の景観と構造
(1) 土地取引文書の記述様式
(2) 中核的所領
(3) 「古典荘園制」的所領と自立経営
三 経済活動
(1) 農業生産と牧畜・森林利用
(2) 特権的流通
四 所領編成
(1) キルデリク領域
(2) 接点としての交易拠点
五 外部世界との回路
小括
第二章 サン・テュベールの市とその周辺
はじめに
一 サン・テュベール修道院の初期史
二 中心地としてのサン・テュベール
三 中心地機能の継受
四 サン・テュベール周辺の景観
小括
第三章 サン・ジェルマン・デ・プレ修道院所領の生産と流通 所領明細帳を主たる素材として
はじめに
一 所領明細帳の概要
二 生産拠点としてのサン・ジェルマン領
三 小経営のあり方
(1) マンス保有民の実態
(2) 農民負担
(3) 小保有地のあり方
(4) ドナティオの諸相
(5) 所領経営におけるマンス保有民の地位
四 流通拠点としてのサン・ジェルマン領
(1) 商品作物の生産
(2) 市場交易との関係の深化
五 修道院の社会統合作用
六 サン・ジェルマン領の所領編成
小括
第四章 サン・ドニ修道院の所領と市場
はじめに
一 サン・ドニ修道院所領における生産活動
二 所領構造
三 商品・貨幣流通との接続
四 市場交易への関与
小括
総括 カロリング期の所領経済と市場
表・地図
あとがき

参考文献
索引
欧文レジュメ